弁護士の業務
弁護士は、社会で生活するみなさんの「事件」や「紛争」について、法律の専門家として、適切な予防方法や対処方法、解決策をアドバイスすることを仕事とする職業です。
現に、弁護士は、法廷活動、紛争予防活動、人権擁護活動、立法や制度の運用改善に関与する活動、企業や地方公共団体などの組織内での活動などといった社会生活のあらゆる分野で活動しています。
このような弁護士の業務は、弁護士法72条によって、
原則として、弁護士以外の者が行ってはいけないことになっています。
その理由は、厳格な資格要件もなく、何らの規律にも服しない者が、みずからの利益のため、みだりに他人の紛争に介入することを業とするような例があり、これを放置するときは、当事者その他関係者の利益をそこね、日常生活の公正かつ円滑な営みを妨げ、ひいては社会の秩序を害することになるからです。
司法書士との違い
最近、電車の吊り広告などで、司法書士の広告を見かけることが増えました。
そのため、私たち弁護士と司法書士との違いについて、質問をしばしばお受けするようになりました。
そこで、両者の違いについて、ご説明します。
まず、原則として、司法書士は、法律行為を代理することはできませんし、法律相談をすることもできません。
この点、あらゆる法律行為の代理をすることが認められ、あらゆる種類の法律相談をすることが認められる弁護士とは、大きく異なります。
弁護士資格を持つ以上、この代理人はしてはいけないとか、この法律相談を受けてはいけないというような制限はありません。
ただ、司法書士のうち、法務大臣の認定を受けることができた場合にのみ、例外的に簡易裁判所の訴訟代理権が与えられます。
この認定を受けた司法書士に限り、法律行為の代理人になったり、法律相談を受けたりすることができます。
弁護士法72条の例外になるわけです。
しかし、司法書士が扱える事件の金額には制限があります。
訴訟の目的の価額や、紛争の目的の価額が、140万円以下である必要があります。
これは、司法書士の訴訟代理権が簡易裁判所管轄の事件に限定されるため、簡易裁判所が扱うことのできる事件(訴訟物の価額が140万円以下の事件)に、司法書士の仕事の範囲も限定されるわけです。
しかし、弁護士には、こういった金額における制限は一切ありません。
よって、司法書士は、金額140万円を超える事件について、代理人となることはできませんし、法律相談を受けることもできません。
たとえば、200万円の金額を請求する事件については、代理人となれず、
法律相談を受けることもできないわけです。
これに反すれば、弁護士法72条に違反する行為をしたものとして、
懲役刑を含む刑事罰に問われる可能性があります。
もし相談の途中で140万円を超える事件であることが判明した場合は、その司法書士は、ただちに法律相談を中止する必要があります。
また、代理人として交渉中に、請求できる金額が140万円を超えて請求できることが判明した場合、その司法書士は、ただちに交渉を中止する必要があります。
中止後は、依頼者が自分で対処するほかありません。
すなわち自分で交渉したり、代理人となる弁護士を探したりする必要があります。
したがって、140万円を超える事件かどうか分からない場合には、はじめから弁護士に依頼されることをおすすめします。
弁護士は取扱うことのできる事件について、金額による制限がないためです。