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人権侵害事件についての警告等

2016年7月5日付加古川刑務所宛勧告

 本件は、受刑者の面会に関する刑務所の裁量の範囲が問題となった事案です。
 刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律(以下「法」といいます)第111条1項では、受刑者の親族等について面会を原則許可するものと定め、同条2項では、前記以外の者でも、交友関係の維持その他面会をすることを必要とする事情があり、かつ面会によって刑事施設の規律及び秩序を害する結果を生じ、又は受刑者の矯正処遇の適切な実施に支障を生じるおそれがないと認める場合には、刑務所長の裁量により面会を許可することができると定めています。
 申立人は、加古川刑務所に入所し、入所から1年半ほどの間に、申立人の母の内縁の夫であるAさんとの面会を申し出たところ、加古川刑務所から3回について面会を不許可とされ、2回について面会を許可されました。
 なお、申立人とAさんとの間で許可された2回の面会は、いずれも法111条2項により刑務所長の裁量で認められたものであり、不許可とした3回の面会について、刑務所はその理由を「面会の許否判断をするため申立人の母とAさんとの内縁関係を疎明する公的資料等(住民票など)の提出を求めたが、提出されなかったため、判断を行うことができなかった」としています。
 社会と隔絶された刑務所内で受刑する受刑者にとって、面会や信書の発受等といった外部交通は、家族との絆、社会との繋がりを確保するため、また、それにより釈放後に円滑な社会復帰をするためにも非常に重要な権利です。
 上記のような外部交通の重要性、また、受刑者の信書発受等に関する過去の裁判例をふまえて検討した結果、当会は刑務所側が申立人とAさんとの面会を3回にわたって不許可としたことは、刑務所長に認められた裁量の限度を超えた処分であると判断しました。
 そこで、加古川刑務所に対して、今後受刑者と親族等以外の者との面会の申出については、@面会によって拘禁目的が阻害される現実的危険性が発生し、その危険を排除するために最小限度の制限として、面会を不許可とすべきことが個別具体的な根拠により確認できる場合でない限り、面会を許可すること、A法111条2項に基づき「面会することを必要とする事情」を判断する際には、刑務所側が既に保有する客観的資料などで記載内容が真実でないことが明らかでない限り、「親族申告票」「親族外申告票」の記載や公的な資料の提出の有無にかかわらず、面会申出者や受刑者の説明、面会申込書の記載内容を尊重すること、を勧告したものです。

2016年3月11日付加古川刑務所宛て勧告

 本件は懲役刑の受刑者にも裁判へ出廷する権利が保障されるかが問題となった事案です。
申立人は、相手方加古川刑務所における服役開始後に、服役の原因となった刑事事件の被害者とされる人物から損害賠償請求訴訟を提起されたため、 同訴訟の口頭弁論期日への出頭のため3度にわたって刑務所へ出廷許可を求めたものの、いずれも不許可とされました。
 裁判を受ける権利は、自力救済が禁止される我が国において、憲法及び法律上の権利・自由を実効的に保障するものとして重要な権利であり、「基本権を確保するための基本権」として法の支配の不可欠の前提をなすものです。このような裁判を受ける権利の重要性に照らせば、出訴の権利のみならず、公開の対審手続(当事者双方が裁判所の面前で自己の主張・立証を行う機会が十分に与えられること)まで保障されなければなりません。
 確かに、懲役刑は、人身の自由を制限する刑罰ですが、それを理由に他の権利・自由に対する制限が当然に正当化されるものではありません。
 当会としては、裁判への出廷は保障されるべき権利であり、本件において、相手方が具体的事情を考慮することなく、一般的抽象的に申立人の出廷をすべて不許可としたことは申立人の権利を侵害したものと考え、勧告を行ないました。

2016年1月6日付兵庫県警察本部及び垂水警察署宛意見

 兵庫県内にある警察署内の留置施設には、机や机の代わりになる物がありません。
 本件は、申立人が垂水警察署の留置施設に勾留されていた間、机がないため食事を床に直接置いて食べる生活を強いられた等を理由として申立があったものです。
 机がないことによる生活上の支障については、食事の際の衛生面の問題のほか、書類の作成、記録や書籍の閲読の際の不便さも考えられます。
 このような状況は、いずれも、食事をしたり、手紙を書いたり、本を読んだりすることを直接的に制限するものではありませんが、一般的に考えられる生活環境の水準を下回っていると考えられることから、収容されている人が小机やその代わりとなる物を利用出来るよう、意見を表明しました。
 なお、警察署の留置施設と同じく、未決被拘禁者(逮捕による身柄拘束後、裁判による有罪判決が確定していない人)が収容されている拘置所では一般的に居室内には小机が常備されているほか、他の都道府県では、警察署内の留置施設において収容されている人に小机を貸与しているところもあるようです。

2015年6月23日付法務省、同大阪矯正管区及び加古川刑務所に対する勧告

 申立人は、戸籍上は男性ですが、女性としての性自認を持ち、かつ性適合手術を受けて女性としての身体的特徴も備えている被収容者(申立当時)です。
 同人からの申立については、既に当会から2012年2月23日付けで、法務省等に対し、同様の受刑者は女性用の施設へ移送するよう勧告していますが、当会からの勧告後も申立人は女性用施設には移送されることなく、反則調査の際に単独室内で男性刑務官から着衣の検査をされる等の処遇を受けていました。
 当会としては、先の勧告同様、本件のような女性としての性自認及び女性としての身体的特徴を有する者は女性として処遇すべきと考え、このような被収容者に対する身体、着衣の検査は女性の被収容者と同じ扱いとするよう、また、男性刑務官が身体、着衣検査をすることを許容している現行の運用については速やかに改めるよう勧告したものです。

2014年11月16日付神戸刑務所宛勧告

 本件は、刑務所における処方薬の変更及びその説明が問題となった事案です。
 申立人には、相手方刑務所に入所する前から、パニック障害等の持病があり、投薬等の治療を受けていたところ、相手方刑務所は、同所入所後の申立人の治療について、一部の薬の処方中止を含む投薬の変更を行い、その後申立人の症状が悪化しました。
 調査の結果、当会としては、この時それまでの処方薬を漸減中止ではなく突然中止したことは厚生労働省研究班が作成した「パニック障害の治療ガイドライン」や処方薬の添付文書における禁忌に照らして不適切な処置であり、症状悪化もその突然の中止による離脱症状であった可能性も考えられると判断しました。また、相手方神戸刑務所では、この処方変更について申立人にほとんど説明がなされていませんでした。
 このような刑務所側の処遇は、申立人の適切な医療処遇を受ける権利(刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律第56条参照)を侵害していることから、再び同様の行為がなされないよう勧告しました。

2014年7月31日付加古川刑務所宛勧告

 刑務所内で雑誌の閲読制限が問題となった事案です。
 一般的に、刑務所内では、刑務所が所蔵する官本の貸し出しのほか、自費で私本を購入して書籍・雑誌を閲読出来ます(冊数制限があります。)。
 本件は、加古川刑務所に収容中の複数の受刑者が、それまで自費で購読していた雑誌(成人向けの月刊誌)について、平成24年12月頃から急に閲読できなくなったというものです。
 憲法21条1項は表現の自由を保障しています。表現の自由は、本来、表現の受け手を抜きにしては考えられない権利ですから、表現の自由には、知る権利(国家の妨害を受けずに自由に情報を受取る権利)が含まれます。書籍や雑誌の情報に自由に接することは憲法で保障された重要な権利です。
 ただし、受刑者の場合、「刑事施設の規律秩序を害するおそれ」や「受刑者の矯正処遇の実施に支障を生じるおそれ」がある場合に限り、必要かつ合理的な範囲で制限できることが法律で認められています(刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律70条1項)。
 そこで刑務所は、受刑者が読む前に雑誌を検査し、問題ある箇所を黒塗りしたり(抹消)、ページを切取ったり(削除)、雑誌そのものを閲読禁止したりできます。
 しかし、本件受刑者は、詐欺や薬物事件により服役中で、罪名からは性犯罪傾向は認められず、それまで閲読できていた成人雑誌の閲読を、禁止する必要性が認められません。また、禁止された雑誌は、一般書店やインターネットで市販されているもので、わいせつ物にあたるものでもありません。
 こうした雑誌を丸ごと閲読禁止とすることは、行き過ぎた制限と判断し、今後は抹消や削除など部分的な閲読制限で対応するよう勧告したものです。

2014年3月25日付加古川刑務所宛勧告

 本件は、受刑者の刑務作業における刑務所側の安全性の確保が問題となった事案です。
 申立人は、受刑者として相手方加古川刑務所に収容されていた間、刑務所内の工場において、生産目標額が記載されたホワイトボードの付け外し作業を数回行いました。この際、申立人は踏み桟の高さが1.45メートルの脚立に登り、さらに床から2.33メートルの高さにある鉄鋼に足をかけて作業をすることがありました。
 労働安全衛生規則は、高さが2メートル以上の高所で危険な作業を行う場合には、危険を防止する措置を講じるよう定めています。この規則は、刑務所と受刑者との関係において直接適用されるものではありませんが、受刑者の刑務作業における安全のためには、尊重されるべきものと考えられます。
 申立人の行った作業は、高所での危険な作業に該当するものでしたが、刑務所側は、申立人に対して、鉄鋼に足をかけることを制止することなく、また、ヘルメットや安全帯を着用させる等の措置も講じていませんでした。
 そこで、今後は受刑者の安全を確保するため必要な措置を講じるよう勧告したものです。

2014年2月6日付兵庫県警察本部宛警告

 警察が警察官に対して実施する水泳訓練において、訓練対象者への安全配慮義務の履行を怠ったことを問題とする事案です。
 本件の申立人は、50歳で機動隊に配属された警察官です。申立人は、新隊員訓練の一環としての水泳訓練の対象者となりました。
 水泳訓練中に、申立人は疲労により二度にわたりプールの縁に掴まりましたが、指導員らは二度とも申立人に事情も聴かずに、訓練を再開させようとプールの縁から手を離させました。その結果、申立人は水中に沈み、呼吸停止及び心停止の状態となりました。
 申立人は訓練対象者の中では高齢でしたし、他に同訓練の約2週間前までは傷病休暇を取得していた、水泳訓練前日の別の訓練では熱射病で倒れていた、という事情もありました。
 このような申立人の年齢や健康状態からすれば、指導員らは申立人が溺水しないよう十分に配慮すべきでしたが、基本的な安全への配慮を怠り、申立人の生命・身体に重大な危険を生じさせました。
 これは重大な違法行為であり、二度と起きてはならないことですから、警察内部の諸訓練について、対象者の生命身体の安全確保のため十分な措置を講じ、再びかかる危険を生じさせることのないよう警告しました。

2013年11月15日付法務大臣宛勧告及び神戸刑務所宛要望

 本件の申立人は申立当時神戸刑務所に収容されている受刑者でしたが、収容時、反則行為による懲罰の審査期間中及び懲罰(閉居罰)期間中に、何十日にもわたり昼夜間、単独室に他の収容者と2名で収容されました。
 単独室というのは、その名前のとおり、本来は1名を収容するための居室です。部屋の中は3畳ほどの生活空間の奥に洗面台と便座が設置されており、合わせて4畳ほどの広さ、また、トイレは腰の高さほどのついたてで仕切られているのみで、個室にはなっていません。
 このような狭い空間に他人の成人男性を2名収容すれば、お互いの距離が非常に近く、さらにトイレでの用便も同室者の目前でするような生活を強いられることになり、多大な精神的ストレスを受けることは想像に難くないことと思います。
 刑務所側はやむを得ない場合に了解を得て行っていると主張していますが、平成18年5月には神戸刑務所において単独室に2名収容されていた受刑者が同室の受刑者を暴行し死亡させるという事件も起きており、この処遇が引き起こす人権侵害性に鑑みれば、いかなる場合でもこのような処遇が許されるべきではありません。
 したがって、全国の刑事施設においてこのような処遇が行われないような措置を講じるよう法務大臣に対して勧告すると共に、神戸刑務所にもこのような運用を改めるよう要望しました。
 なお、日本における昼夜間独居拘禁の人権侵害性については国際的にも懸念されており、国連の拷問禁止委員会は、平成25年5月、日本政府に対し、「(a)独居拘禁が、厳しい監督の下で最小限の期間、司法審査が可能な状況で最終手段として用いられるよう法改正し、独居拘禁の明確かつ具体的な基準を確立すること」、「(b)独居拘禁中、被拘禁者の心身の状態につき医師が定期的に監視・
検査するシステムを確立し、その医療記録を被拘禁者とその弁護士に開示すること」などを勧告しました。この勧告を受けた日本政府の対応が注目されます。

2013年7月31日付神戸刑務所宛勧告

 本件は、受刑者(申立人)が、刑務所(相手方)に対して訴訟に関する書面及び人権救済申立書を作成したいと願い出たところ、閉居罰中であることを理由に認められなかったという事件です。
 たとえ受刑者であっても、訴訟に関する書面を作成することは、裁判を受けるにあたって必要不可欠な準備行為であって、理由なく拒否されてはなりません。
 また、弁護士会等に対する人権救済申し立ては、裁判と直結しなくとも、その前提となる法的援助を受ける権利の一環として、理由なく拒否されてはなりません。
 そのため、刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律152条1項6号では、閉居罰中においても、受刑者は「弁護人等との間で信書を発受する場合及び被告人若しくは被疑者としての権利の保護又は訴訟の準備その他の権利の保護に必要と認められる場合」は、信書を「発受」することができることが規定されています。
 「発受」が許されている以上、その前提となる「作成」が制限される理由はどこにもありません。
 法の趣旨を踏まえて当弁護士会で検討した結果、本件において、申立人の裁判を受ける権利および十分な法的援助を受ける権利の侵害があったとの結論に達しました。
 そこで、相手方に対し、今後は訴訟の準備その他の権利の保護に必要と認められる書類の作成を妨げないよう勧告しました。

弁護士 小川 政希
弁護士 園田 洋輔

2013年7月31日付明石区検察庁宛要望

 勾留延長の必要性が疑われる事案です。申立人は、図書館において館長と口論になり、体当たりなどの暴行を加えたとして現行犯逮捕されました。その後、相手方明石区検察庁の検察官によって勾留請求がなされ、明石簡易裁判所は勾留決定を行いました。さらに、10日目の勾留満期日に同じ検察官によって勾留延長請求がなされ、裁判所は勾留延長決定を行い、結果として19日間にわたる勾留がなされた後、申立人は不起訴処分となって釈放されました。
 本件は軽微な暴行事件であり、関係者らの供述によれば容易に事件の終局処分をすることができ、申立人が早期に釈放されてしかるべき事案でした。しかし、本件で勾留延長請求がなされた時点において、相手方明石区検察庁は、被害者取調べ、参考人事情聴取、実況見分、被疑者取調べのいずれも行っていませんでした。これは、適切な捜査を行うことなく漫然と勾留を延長して申立人を身柄拘束したものに他ならず、人権侵害に当たるといえます。
 よって、今後、このように安易な勾留延長請求がなされることのないよう相手方明石区検察庁に要望するとともに、兵庫県下の全ての裁判所に要望書を参考送付し、安易に勾留延長決定をすることのないよう注意喚起を行いました。

弁護士 北村 拓也

2013年3月19日付育英高等学校及び同校生徒指導部長に対する警告

 本件は教育機関における指導の限度が問題となった事案です。
 申立人は相手方高等学校の在学中に複数回の喫煙をしたとして相手方生徒指導部長らから自主退学の勧告を受けました。この喫煙行為は、相手方校内の体育館で起きた火災の調査において判明したものですが、申立人の喫煙とこの火災との間には関連は認められていませんでした。ところが、この退学勧告の場において、相手方生徒指導部長は何ら証拠もないまま申立人を火災の犯人と決めつけて「放火魔」と告げ、机を叩いての恫喝、大声で怒鳴り付ける等の言動により申立人に弁明の機会を与えず、侮辱的な言辞を浴びせ続けました。また、同席した他の教諭も、生徒指導部長の言動を制止しませんでした。
 相手方の自主退学勧告は、教育機関として許容される懲戒行為の範囲を明らかに逸脱しており、申立人の人格権を著しく侵害し反論の機会を抑圧するなど適性手続にも違反しているものです。従って、本件について猛省し、今後生活指導において人格権侵害をすることがないように十分な措置を講じるよう相手方高校及び同校生徒指導部長に警告しました。

2013年3月13日付兵庫県警察本部及び飾磨警察署に対する勧告並びに大阪入国管理局神戸支局に対する要望

 本件の申立人はマレーシア国籍を有する女性で、事情により在留許可が認められなくなったものの、子供を置いて出国することが出来ないためオーバーステイ状態で日本に留まり在留特別許可を求めていました。申立人はオーバーステイに先立って相手方大阪入国管理局神戸支局(神戸入管)に違反調査にはいつでも応じる旨を伝え、その後神戸入管からの呼出に応じて仮放免許可を得たのちも、呼出の都度、入管へ出頭していましたが、仮放免許可から3カ月が経過する頃に、飾磨警察署に「神戸入管から通報があった」として不法滞在の疑いで逮捕されました。
 確かに、別々の機関である入管と警察とで、仮放免の判断と逮捕の判断が同一である必要はありません。しかし、当時申立人については既に入管から仮放免の許可を受けており、また家族と同居しており、容易に逃亡するとも思えない状況でもあったのですから、不法滞在の事実のみに基づいて警察が直ちに逮捕して身体を拘束する必要があったかについては疑問が残ると言わざるをえません。
 そこで、今後は仮放免されている外国人を漫然と逮捕することがないよう、勧告及び要望に至ったものです。

2012年12月13日付神戸刑務所に対する勧告

 本件は、簿記学習の自習のため申立人が電卓の使用を願い出たが神戸刑務所がこれを許可しなかったという事案です。
 刑務所内においては、自費購入したものでも、様々な物品について使用が制限されていますが、このうち、電卓については「受刑者からの申出内容及び当該物品の用途に鑑み、使用が必要と認められる事情があり、かつ、処遇上有益であると認められる場合には、使用を許すことが相当である」とされています。この点、簿記を学習することが社会復帰後の生活に有益であることは言うまでもなく、また、簿記学習において電卓の使用は必要不可欠なものですから、電卓の使用が認められるべき場合にあたると思われますが、神戸刑務所においては、通信講座を受講中である場合などに限って使用を許可し、自習で簿記を勉強したい者には使用を許可しないという運用がなされていました。
 よって、通信講座の受講の有無にかかわらず、真に簿記学習の意欲が認められるものには電卓の使用を許可するよう勧告したものです。

2012年10月2日付神戸刑務所に対する勧告

申立1 ルーペの複数使用について
 申立人は視覚障害を有しており、刑務所に入所する前から用途に応じた複数のルーペを使い分けていたため、刑務所内においても複数の種類のルーペを使用出来るよう願い出たものの、神戸刑務所から許可されなかったという事案です。  確かに、補正器具であっても必要性のないものまで無制限に使用を認めれば、刑務所の管理上支障が生じるおそれがあるかもしれません。しかし、申立人が使用を願い出たルーペはその倍率や構造がそれぞれ異なるものであり、用途に応じて使い分けることにより視覚障害による不自由不便を解消することが期待できること、また、複数(2つ)のルーペの所持を認めることで刑務所の管理運営上具体的な支障が生じるおそれも低いと思われることから、ルーペの復讐所持を認めるよう勧告したものです。
申立2 雑誌の付録の宅下げ制限について
 雑誌の宅下げについては「2012年2月23日付神戸刑務所に対する勧告書」において記載しましたが、付録においても雑誌同様、宅下げを制限する根拠はないため宅下げを認めるよう勧告したものです。

2012年8月1日付兵庫県高等学校教育研究会視聴覚部会に対する警告

 本件は放送コンクールにおける「表現の自由」の侵害が問題となった事案です。
 申立人が顧問を務める県立高校の放送部が放送コンクールに応募し、全国大会の予選まで進出したテレビドキュメント作品が審査ミスにより予選落ちとなる出来事がありました。この放送部は審査ミスを題材にラジオドキュメント作品を作成し、翌年の地区大会に応募したところ、地区予選を勝ち抜き兵庫県大会決勝に進出することとなったものの、決勝を直前に控えた時期に、この兵庫県大会を運営しており、申立人も所属する兵庫県高等学校教育研究会視聴覚部会(高等学校の放送部顧問が任意に加盟する団体)において緊急理事会が開催され、結果として、申立人側の高校がこのラジオドキュメント作品を取り下げることになったというのが本件事案の概要です。
 相手方部会は、本件ラジオドキュメント番組の構成が、審査ミスに対する全国大会事務局の尽力(複数回の謝罪や代替措置の提案など)がまったく紹介されていないばかりか、さらに全国大会事務局を批判するものになっていたため、このような番組構成が教育的配慮を欠いているとして、緊急理事会においてこの点を申立人に指摘したところ、申立人からの同意のもと作品が取り下げられたものであると主張し、一方、申立人は、相手方部会からの大会と2者択一的に迫られたもので、半ば強制的に取り下げられたものであると主張しました。
 両者の主張を踏まえて検討した結果、当会としては、申立人の同意は真意に基づくものとは認められず、相手方部会の対応は、不当に申立人側放送部の表現の自由を侵害したものと判断しました。なお、表現の自由は憲法21条1校により保障された重大な権利ですから、相手方部会に警告したものです。

2012年7月13日付神戸刑務所に対する警告

 本件は刑務所内における懲役受刑者の隔離処遇が問題となった事案です。
一般的に懲役受刑者は、刑務所内にある作業所(工場)に配属され、日中はそこで他の受刑者と共に刑務作業を行っています。
しかし、ある受刑者に「他の受刑者と接触することにより刑事施設の規律及び秩序を害するおそれがあるとき」もしくは「他の受刑者から危害を加えられるおそれがあり、これを避けるために他に方法がないとき」には、日中も夜間もその受刑者を他の受刑者から隔離して処遇すること(昼夜間独居拘禁処遇)が認められています。また、この期間は3カ月とするが、特に継続する必要がある場合には、さらに1カ月毎に期間を更新することが出来るとされています。
それでは更新を続ければこのような昼夜間独居拘禁処遇は無制限に認められるべきなのでしょうか。
本件の申立人は、2009年10月から2011年5月まで1年7カ月の間、神戸刑務所において他の受刑者からほとんど隔離され、4畳ほどの広さの単独室(一人部屋)に収容されていました。また刑務所側は、2010年5月以降は部屋の外窓にプラスチック板、視察窓に遮光フィルムを、部屋の外側の廊下の窓に寒冷紗(織り目の粗い布)をそれぞれ設置しました。
当会は、調査の結果、申立人の長期間に及ぶ昼夜間独居拘禁処遇は隔離の必要性を慎重に判断せずになされたものとの結論に至りました。さらに、申立人の収容された居室は、プラスチック板等の設置により、天気や気候などの外部の様子さえまったく窺えない状況にされていましたが、人を長期間このような状況下に置くことは、著しい精神的苦痛を与えるものと思われます。
したがって、長期間の隔離処遇と居室窓へのプラスチック板等の設置についてこれを改めるよう神戸刑務所へ警告を行いました。
また、刑務所においては、秩序や規律の維持のため、移動の際に手足を揃えた行進を行う等の指導がなされることがありますが、このような指導に従わない際に懲罰を科す等、懲罰により行進等を矯正することがないように併せて要望しました。

2012年5月14日付兵庫県警察本部及び長田警察署に対する警告

 逮捕の適法性が疑われる事案です。申立人は自宅近くの路上で、携帯電話で通話しながら運転していたとして相手方長田警察署の警察官2名に呼び止められたため、車を車庫に入れる旨、降車して警察官らに伝えた上で車を車庫に停車しました。その後、申立人が下車して車庫から出ようとすると、警察官のうち1名が、両手を広げて申立人を追い込むように近づいてきたため、申立人は「やめて下さい」と言いながら警察官の肩を押したところ、平手打ちをされ、両手首を掴んで強くひねられた上で、手錠をかけられ、公務執行妨害を理由に現行犯逮捕されました。
 もともと、申立人の行為は運転中に携帯電話を使用したという軽微なものでした。恐怖を感じた申立人が警察官の肩を押した行為が仮に違法なものであったとしても、申立人を平手打ちし、両手を強くひねったうえ手錠まで使用する必要があったとは思えず、警察官らの制圧行為は限度を超えたものです。
 また、申立人はその後2日間にわたって警察署に拘束されましたが、これについても、2日間もの拘束が必要であったか疑問があります。
 よって、申立人への制圧行為及びその後の2日間の身体拘束について警告したものです。

2012年2月23日付警察庁、兵庫県警察本部及び神戸西警察署に対する警告

 申立人は、自動車の後部座席に積んでいた買い物カゴについて、相手方神戸西警察署警察官から職務質問を受けました。その際、申立人はゴミ置き場に捨ててあったものを約1年半前に拾ったと答えましたが、警察官は申立人の行為が占有離脱物横領罪にあたると一方的に判断し、同行を求めました。同行先の警察署内において、申立人は写真と指紋の採取を求められたためこれを拒みましたが、警察官から大声で怒鳴られ、無理矢理立ち上がらせようとパイプ椅子を強引に引くなどされたため、恐怖心をいだき、仕方なく指紋採取や顔写真撮影、身長測定、微罪処分手続書への署名押印に応じました。
 申立人は相手方警察官に椅子を強く引かれた際、椅子から転落して臀部を打撲するけがをしましたが、警察官のこのような行為は暴行にあたります。また、任意の同行に応じているだけで身柄を拘束されている訳ではない申立人に対して令状なしに指紋採取、顔写真撮影、身体測定を強制した行為は令状主義に反しており、いずれも人権侵害にあたると考えられます。さらに、本件においては、問題となった買い物カゴが、所有者がいない無主物なのか、占有を離れた他人の所有物なのかを客観的に判断することは困難であったと推測されますが、このように裏付けが十分でないにもかかわらず、暴行により申立人の意思を制圧した上で微罪処分手続書に署名・押印させたことについても、刑事手続における適性手続の要請に反しており、人権侵害にあたるといえます。
 なお、一般的に捜査の際に採取された指紋や顔写真については、警察庁及び都道府県警察に置いて保管し、被疑者の特定に利用されているところ、本件のように不適切な手続により取得された指紋や顔写真を捜査機関が保有し続けるべきではありません。
 よって、今後このような事が行われないよう警告した事に加え、本件における微罪処分手続書、申立人の指紋、顔写真、測定身長等の個人情報を廃棄することを求めて勧告したものです。

2012年2月23日付法務省、同大阪矯正管区及び加古川刑務所に対する勧告

 本件の申立人は、性同一性障がいにより女性としての性自認を持ち、かつ性適合手術を受けており女性としての身体的特徴を備えているものの、戸籍には変更手続きをせず男性として搭載されていたことから、男性受刑者用の施設に収容されました。
 刑事施設においては男女が分離して収容されていますが、それは主として異性、特に男性による女性に対する性的虐待による身体的直接的な侵害を防止するとともに、女性受刑者が男性受刑者との接触を強制されず、また、男性受刑者や男性職員からプライバシー侵害を受けないなど、広く女性の性的尊厳を守るためと考えられます。
 本件申立人に対して、加古川刑務所は、定期的に女性ホルモンの注射を受けさせ、女性の看守を配置する等の配慮を行っていましたが、一方で女性の衣類を支給せず、女性用の下着の使用を認めず、髪型は男性としての基準に基づいた髪型とし、入浴時の監視を男性刑務官が行うなど、女性としての性自認を有する申立人にとって精神的苦痛を感じさせる処遇も見受けられました。
 当会としては、分離の要件となる男女の区別については、戸籍を基準とするのではなく、本件申立人のように女性としての性自認及び女性としての身体的特徴を有する者については、女性として処遇すべきと考え、申立人を女性用の施設へ移送するよう勧告しました。

2012年2月23日付神戸刑務所に対する勧告

 刑務所内では居室内で私物等を保管するスペースを制限されており、居室内で保管しきれないものは領置(刑務所内の別のスペースで保管すること)もしくは宅下げ(私物を親族や知人等に引き取って持ち帰って貰うこと)することになります。
 神戸刑務所では、新聞や雑誌について閲覧後は原則として廃棄させ、釈放後の社会生活上必要な場合などに限り、宅下げを認めるとの運用をしており、本件申立人が「趣味を活かし、出所後の生活に役立てたい」として特別宅下げ願いを申し出た雑誌の宅下げを2度にわたって不許可としました。
 本件は、神戸刑務所が「釈放後の社会生活上必要があり、・・・領置を認めることが相当な場合に限」り領置が認められるとの「領置」に関する通達の定めを「宅下げ」にも援用して運用していたものです。しかし刑務所内で保管するため、保管容量に物理的制約がある領置と異なり、宅下げにはこのような物理的制約はないため、領置に関する定めを宅下げにも適用するのは誤った解釈といえます。よって、このような運用は、本来なら宅下げによって廃棄を免れるはずの書類を廃棄されることにより、被収容者の財産権を不当に侵害している恐れがあることから、今後は改めるよう刑務所へ勧告しました。

2012年2月23日付兵庫県警察本部及び三木警察署に対する警告

 本件では、申立人の逮捕について、その必要性が問題となりました。1月中旬の午後6時頃、三木警察署署員が、信号無視があったとして申立人の車を停車させ、申立人に免許の提示を求めました。その際、署員は免許証を手渡すよう求めましたが、申立人は免許証を手渡すことを拒否し、自らの手に持ったまま、3度にわたって相手方署員に提示しました。
逮捕の際には逮捕の必要性(証拠隠滅のおそれ及び逃亡のおそれ)があるか否かが問題となるところですが、本件において申立人は警察官の指示に従って直ちに車両を路側帯近くに停車しており、免許証についても相手方署員が記載事項を確認出来るように提示しようとしていました。したがって、本件逮捕はその必要性が認められない違法な身柄拘束であると判断し、今後このようなことがないよう警告したものです。

2011年11月8日付姫路少年刑務所に対する勧告

 本件は、少年刑務所の受刑者(申立人)が、少年刑務所(相手方)に、申立人が治療を受けた病院名を教えて欲しいと申し出たが、教えてもらえなかったという事件です。申立人は、刑務所内で他の受刑者から暴力を受け、市内の病院で治療を受けましたが、土地勘がなく、また、暴力によって意識が混濁し、自分が搬送された病院名を覚えていませんでした。申立人は診断書を取得して被害届を出すために上記申出をしました。
 本件では、知る権利の侵害の有無が問題になります。
 「行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律」では、自己を本人とする保有個人情報については、開示が原則であって非開示は例外とされています。また「被収容者の診療記録の取り扱い及び診療情報の提供に関する訓令」でも、診療情報は公開が原則であると定められています。
 当弁護士会では、法の趣旨を踏まえ、申立人の申出を拒否するだけの合理的な理由があったかどうかを慎重に検討し、少なくとも本件においては知る権利の侵害があったとの結論に達しました。そこで、相手方に対し、申立人が受診した病院名を知らせる等必要な処置をとるよう勧告しました。

弁護士 小川 政希

平成22年11月18日付神戸刑務所に対する勧告

 平成21年2月ころ、神戸刑務所内で複数の受刑者が、刑務所の規則に違反して、菓子類、手紙、レンズ付きフィルムなどの物品を所持し、あるいはこれらを外部とやりとりするなどの規則違反(反則行為)をしたとされる事件に関連して、受刑者の一人である申立人が、刑務所から反則行為の一部に関与した疑いをもたれ、隔離措置(反則行為の証拠隠滅を防ぐなどの目的で、受刑者を一人ずつ引き離して相互の交流を禁止し、刑務作業からも除外するなどの制約を設ける措置)を受けたことについて、刑務所による人権侵害であるとして救済を求めた事案です。
 法律上、反則調査のための隔離期間は原則として2週間とされていますが、この期間が延長されて長期間の隔離が行われており、このような長期間の隔離が正当と認められるだけの理由があったかどうかが問題とされました。
 調査の結果、延長後の隔離を正当化するに足りる事情が認められないことから、これについて刑務所の人権侵害を認定し、再発防止等を勧告しました。

2011年5月30日付加古川刑務所に対する勧告

 本件は、刑務所における個人情報の管理が問題となった事案です。
 行政機関である刑務所には保有している個人情報を適切に管理し、漏えいを防ぐ義務があります。しかしながら神戸刑務所では、一日の刑務作業の始業から終業までの間、計算係の受刑者に工場内の受刑者の姓、配役年月日、生年月日や刑期終了日等が記載された手控えを預けるとの取扱いがなされていました。これらの情報は単に個人を識別することのできる情報に過ぎないという訳ではなく、刑務所という限られた空間に収容されている者の情報であるという点で、極めて慎重な取扱いが求められる「センシティブ情報」に該当するものですから、刑務所側の管理方法は杜撰であったと言わざるを得ません。
 加古川刑務所においては、申立人からの苦情申し出により速やかに管理方法を改める等の措置を講じていましたが、この点に限らず、今後は収容されている受刑者の個人情報が漏えいすることのないために必要な措置を講じるよう勧告しました。

2011年5月30日付神戸刑務所に対する勧告

 本件は、刑務所における身体障がい者への刑務作業の配役について問題となった事案です。
 本件申立人は入所当時、右足首の運動機能低下により身体障害6級の認定を受けており、また腰部に過度の負担がかかる長時間の立ち作業が困難な状態でした。
 入所当初、申立人は椅子に座りながら刑務作業の出来る工場に配役されましたが、他の受刑者との口論により懲罰を受け、他の工場に転役されることになりました。その後、申立人は右足首及び腰部の痛みやしびれを理由に作業を拒否し、懲罰を受けて工場を転々とすることを繰り返しました。
 例えば、刑務所側が申立人の障がいを「立ち作業が困難」という程度において把握していたのであれば、座位の作業などによって申立人の腰部への負担について予見困難な面もあったと思われます。しかしながら、申立人は作業復帰後に腰痛の悪化により休養を余儀なくされる等しており、刑務所には受刑者の健康に対してより慎重な配慮を行うべきであったと言えます。
 そこで、障がいや健康上の理由により刑務作業による病状悪化が見られる受刑者の作業拒否に対して、刑務作業がその症状に与える影響を的確に把握し、懲罰権の行使及び配役の変更については、十分慎重に判断することを求めて、神戸刑務所へ勧告しました。

 

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兵庫県弁護士会