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超監視社会に立ち向かう 〜共謀罪の正体と国連が提唱する「セーフガード」とは〜

2017年(平成29年)12月16日(土)

2017年(平成29年)12月16日(土)兵庫県弁護士会講堂において、超監視社会に立ち向かう〜共謀罪の正体と国連が提唱する「セーフガード」とは〜と題して市民集会を行いました。共謀罪法が成立して近畿では京都弁護士会とならび最初の集会であったこともあり、参加者は91名と共謀罪法成立後にもかかわらず、多くの方に参加いただきました。

まず、当会共謀罪・特定秘密保護法問題対策プロジェクトチームの会員から、「超」監視社会の実態と国連が提唱するセーフガードについて説明をしました。「超」監視社会は、遠隔操作での監視や顔認証システムや街頭の監視カメラ・GPSシステム、そしてマイナンバーによる監視を可能にする社会であり、日弁連が、2012年に監視カメラの法的規制の意見書を、2016年には顔認証システムに関する意見書を出していることを紹介しました。また、兵庫県内では、宝塚市が街頭の「防犯カメラ」の使用基準に関する要綱を定めていることも紹介しました。他方、特定秘密保護法によって、私たちが知らない間に警察が情報を秘匿できる状況にあること、ドイツでは警察が収集した市民情報をチェックする「連邦データ保護観察官」が、警察の作成した市民情報データベースをコントロールし、不要な市民情報を削除させる権限を与えていることなども紹介しました。国連でも、セーフガードと呼ばれる諜報機関に対する独立した民間組織の監督の必要性を訴えており、市民のプライバシー情報が不法に取得・集積されないシステムとして、日弁連が提唱する以下の対策が必要なのではないかと提案しました。

監視社会にしないための対策
1)あらゆる人々のインターネット上のデータを、網羅的に収集・検索する情報監視を禁止する
2)監視カメラ映像やGPS位置情報などを取得し、それを捜査等に利用するための法規制を行う
3)通信傍受の対象犯罪の更なる拡大・会話傍受に反対し、独立した第三者機関による監督を制度化
4)組織犯罪処罰法改正法の、いわゆる「共謀罪」の規定を削除
5)情報機関の監視について、厳格な制限を定め、独立した第三者機関による監督を制度化
6)マイナンバー制度が、市民監視に利用されないよう、廃止、利用範囲の大幅な限定、民間利用の禁止等の対応


秘密社会にしないための対策
1)公的情報の公開、保存及び取得のため、情報自由基本法(仮称)を制定すること
2)行政機関の保有する本来市民が入手すべき情報を、恣意的に隠匿できない情報公開制度を確立すること
3)「行政文書」となる全ての電子データを長期間保存
  行政文書の恣意的な廃棄等が行われないよう監視する
  独立性の強い第三者機関を設ける
4)秘密保護法について、廃止を含めた抜本的見直し
5)内部告発者の保護を強化するとともに、公益通報制度を周知する
6)メディアが自律的に多様な報道を行うことが促進される仕組みを構築


 次に、内田博文教授から、講演「共謀罪のある社会」についてお話しいただきました。内田教授から当日お話しいただいた要旨を提供いただきましたので掲載します。

 逸脱した法適用・法解釈により治安維持法の取締り対象は、いわばホップ・ステップ・ジャンプという形で、幾何級数的に拡大することになった。普通の人たちの普段の生活までもが取り締まられることになった。それは大日本帝国憲法にも違反しており、事実上のクーデターといってよかった。このような逸脱適用・解釈を支えるために、検察官司法を強化すべく、検察官などの「武器」が整備された。
 治安維持法の昭和16年改正で導入され、その後、戦時刑事特別法(昭和17年法律第64号)により一般の刑事手続にまで拡大適用された戦時特例(戦時特別刑事手続)もその一つであった。

 問題は、それが戦後、日本国憲法が制定・施行された後も払拭されずに、「日本国憲法の施行に伴う刑事訴訟法の応急的措置に関する法律」(昭和22年法律第76号)を介して、新刑事訴訟法の中に温存され、「戦時の衣」を「平時の衣」に着替えて、むしろ強化されたという点にある。
 予審制度の廃止、検面調書制度、検察官の強制捜査権限、起訴独占・起訴裁量、未決勾留日数の倍増など、戦前よりも戦後の方が検察官の権限は大きい。それらは日本の刑事裁判における冤罪の構造的な要因の柱となっている。自白偏重傾向は戦後も続いている(氷見事件、今市事件など)。

 「罪となるべき事実」の認定がずさんだという点も治安維持法の教訓で、事実から出発してその構成要件該当性を判断するというのではなく、治安維持法の構成要件に該当するという規範的評価が初めにあって、それに符合するような事実が列挙されただけであった。「小事実」を当罰的な規範的評価を織り込んで「特大事実」に膨らませていくという手法が採用された。これには時には拷問などによって獲得された自白が大きな威力を発揮した。「思想係検事」による虚偽の自白強要につながった。
 治安維持法では、規範評価(国体変革・私有財産否定など)に併せて主観を聴取する必要があるため、この手法が効果を発揮した。

 翻って、現在、通信傍受の対象拡大、GPS捜査法制など検察・警察の強制捜査権限がさらに拡大されようとしており、更には会話盗聴、行政盗聴のおそれもある。これらは共謀罪の捜査として利用される可能性が高い。共謀罪法にも、共犯者の減免規定が置かれており、共犯者供述の補強法則不要との立場と相俟って、自白重視の取調が予想される。
 1993年の国連総会で採択された「国内機構の地位に関する原則(パリ原則)」の創設を日本は国連人権委員会等から求められているが、未設置の状態が続いている。治安維持法の逸脱適用・解釈に典型的に見られるような「国家による人権蹂躙」を阻止し、市民の権利を保護する制度は戦前のみならず戦後も存在しない。
 共謀罪法は、以下の点から、市民の日常的な活動・行動が捜査の対象とされる。

マフィアによる犯罪や、公権力行使場面における犯罪などが共謀罪の対象犯罪から除外されている半面、著作権法違反や偽証罪等、テロ対策やマフィア対策と無関係なものも共謀罪の対象犯罪とされており、共謀罪の標的は市民に向かっている。
破産状態のリゾート会社の会員権販売行為が組織的詐欺罪とされているように(最高裁第三小法廷 平成27年9月15日 決定)、組織的犯罪処罰法の「組織的犯罪集団」には強い内部統制は不要であり、「団体」(判例では4人でも「団体」と認定されている。)と同義である。
B共謀については、すでにこれまでの判例集積により、未必の故意で足り、日時/場所の特定も不要であり、順次共謀・現場共謀・黙示共謀(傍観含む)も認められている。
実行準備行為は日常行為であり、結局、行為の動機・目的が処罰の根拠となるため、治安維持法と同じ取調方法(自白獲得)に向かい、未決拘禁の長期化が危惧される。
共謀罪は幇助も観念されるため、取調対象となった家族にも取調が及びうる。

 すでに発生した倉敷民商事件は、主犯を在宅起訴・執行猶予とし、幇助犯である団体職員を428日未決勾留し、その捜査を公安警察が担当している。捜査の目的は倉敷民商を解体させることにあったと言える。共謀罪についてもこのような使い方が懸念される。

 治安維持法と同じく、自白獲得という取調方法と自白獲得のための関係者の個人情報の徹底的な収集、そして、それを通じた民主主義的、あるいは自由主義的なそれを含む「反政府運動」や「反戦運動」などの取締りに向かうことが予想される共謀罪法が成立した今、治安維持法の取締・取調に有効とされた現行刑訴法の諸制度の見直しも含め、以下の点の対応を急ぐ必要がある。弁護士会の役割と活動に期待したい。

 ・プライバシー情報の保護 (国内人権機関・プライバシー情報保護措置法制(セーフガード))
 ・判検交流制度のない法曹一元制度とこれに基づく令状審査の実効化
 ・未決勾留日数の見直し
 ・捜査官の強制処分による人権蹂躙を防止するための第三者機関の創設
 ・自白調書(検面調書等)の証拠能力の見直し

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